伊香保温泉へ ー第 1回

夕方に車は伊香保の温泉街に着いた。

高台にあるせいか霧に包まれ視界は悪い。

宿泊のホテルは築50年の建物である。到着のお客はまだ少なく、
人気のないエントランスは、ひっそりしていた。
赤のじゅうたんが癒す心を求めてきた私にはまぶしかった。

友人がネットで決めたこのホテル。街道傍に8階建ての建造物が
色あせた色彩を周りの新緑と肩を並べてたたずむ風景は時代遅れの
風景である。

東京から車で約2時間の温泉。
久しぶりの温泉である。何度かは足を伸ばしたことはあるが
今回のような男友達3人の温泉1泊は初めてである。

仕事をとうしてのつながりから、何気ない一言から今回の男同士での
旅となった。

案内係は20代後半の若者である。黒のスーツにネクタイ。
部屋までのあんないの途中で何気ない会話から、大学を卒業してから
中国へ派遣されて3年間 ストレスから体を壊し、生まれ故郷に帰っての
就職。
胸に見習いと書かれたプレートがまぶしい。

案内された部屋は幾度なく人を迎えた畳の群れた匂いとかすんで見える
壁紙の組み合わせが今回の旅行のすべてを教えてくれるようである。

10畳の畳と窓側の小さな椅子が我々の空間である。
気持ちを引き締め誰からでもなくお風呂へと言い出した。

時計は4時を回ったばかり。
早速、浴衣に着替え、タオルを小脇に抱え、人気のない館内を
エレベーターに向かう。
せっかくだから屋上展望風呂へと足を運ぶ。
エレベーターを降りると狭い通路が目に飛び込む。
白茶けた壁に矢印が白のプレートの方向を示している。
その方向に階段を下りたりあがったりしているうちにようやく
屋上露天風呂の入り口に到着。

「エッ」
人が3人入れば一杯の狭い浴槽が屋上に周りを人工の竹に囲まれながら
寒い風に囲まれているのが目に飛び込んできた。

そして、脱衣所の壁にはこのお風呂は水道水であると明記された
案内の紙が風に揺れながらなびいている。

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