「今 近くにいるから」
突然 友人から電話が
何も目的も言わず 突然 もしかして 古くなった記憶をなんとか 手探りに思い出したのが
まさか まさか
しばらくして
ピンポン ピンポン 玄関のインターホンが
「久しぶり、」
一年ぶりの彼の顔が目の前に
「いやあ 元気だった?」
「うん 仕事の途中だけど 山ちゃんの家にちょっと顔を出そうと思ってね」
何十年間の彼からの二人だけの何気ない言葉を交わし そして
「これ 持ってきた」
新聞紙に包んだ箱を開けて見れば
「今年は まあ まあかな」
松茸が目の前にどんと箱いっぱいに広がっていた
「うわあ すごいね こんなにたくさん」
「二日前 故郷に帰って 山の仕事を村の人と片付けて いつものようにみんなで秘密の場所で取ったんだ そしてすぐに徹夜で東京に帰ってきたんだ」
何気ない話をしてるが 小生には今年もありがたい贈り物である
彼のふるさとは岩手県 そして 上京して仕事を通じて彼と知り合って三〇年 お互い仕事が忙しく彼との顔合わせは一年に一回ぐらいである 今 小生は仕事を引退してるのでほとんどかれとの交流が途切れてるが しかし
いつもいつも いつものように 突然
「今 近くにいるから 行ってもいいかな」
今年も夕方 彼の合言葉に
もしかしたらと 頭の中は松茸の姿が
そして 「せっかくだから少し家の中に入ってよ」とさそっても「いや仕事があるから」と いつもの返事をして彼の姿はたちまち 見えなくなった。
彼が突然来る前 ちょうどTVで 京都の松茸の初競りでなんと三本ほどで90万で落とされた画面をボーットめていたが それから数分でインターホンが
いやあ びっくりびっくり
そして翌日 上官殿が彼に教わった料理方法で食卓に
まさに これぞ松茸の王道の料理
早速 友人数人に早いほうが松茸の香りがある内と思い直接手渡した、
すぐに友人からは 「宝くじ一等に当選したみたいだよ」と喜びの声がすぐに
その時いつも彼のあの言葉が思い出す
「山ちゃん 今 家にいるの?」
あの言葉は小生には魔法の言葉であります。